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【書評】あの時、本でさえ戦った『戦地の図書館』感想。

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モリー・グプティル・マニング

『戦地の図書館』

 

を読んだよ!

 

  

ざっくりまとめ

自由をめぐる、本と第二次世界大戦の物語。

もうちょっと詳しく

この本の主題は、第二次世界大戦中にアメリカで発行された「兵隊文庫」です。

兵隊文庫 - Wikipedia

「本」が第二次世界大戦にどの様な影響を与えたのか、

何故「本」が求められたのかを書いた本です。

思想戦の開幕 

ナチスドイツが本を燃やし「我が闘争」を広め、プロパガンダ作戦を行ったことで、

第二次世界大戦は思想戦・心理戦の側面を持ちました。

それに対抗するためにアメリカが下した結論が、

思想戦における最強の武器と防具は、本である

というものでした。

士気と予算の問題

一方で兵士の士気と予算の問題がありました。

それまで一般市民として生活していた人々が、徴兵されて軍隊に入ったために

プライバシーがない生活に苦痛を感じていました。

娯楽と言えば合唱とスポーツくらいで、まったく人気がありません。

かといって、娯楽を充実させる予算もありません。

そこで注目されたのが、低予算で実現できる「本」だったのです。

思想戦に対する武器であり、兵士の士気も維持できて、低予算。

一石二鳥どころか三鳥だったのです。

ペーパーバック登場

 

こうして本が求められるようになると、厄介な問題が発生してしまいます。

当初一般からの寄付によって成り立っていた為に、数が足りません。

おまけに当時「本」といえばハードカバーが主流で、重いく分厚い物です。

それを「生死がかかる時の荷物として持ち歩くのか?」という事になってしまいます。

本を作る側も、物資の不足によりハードカバーの本が作れなくなってきました。

ここで需要と供給が一致し、ペーパーバックの本が主流となんたのです。

検閲と本の戦い(第一ラウンド)

兵士に本がいきわたるようになると、リクエストも届くようになります。

その中に、とある二つの作品がありました。

それが、エロ描写のために発禁処分となった本だったのです。

本を送るべきか否か議論が沸騰し、反対派の意見も過激です。

賛成派は反対派の意見をこういっています。

彼らは、これらの本のことを、くず同然の代物だと思っています。

おいおいマジかよと思うかもしれませんが、いまの日本でも同じように思っている

人はいますよね。さて、

エロ描写のために発禁処分となった本を戦地に送るべきか否か

という問題はどう結論がだされたのか。

アメリカ軍は自由を守るために戦っているのだから、

どの様な作品でも――くず同然の代物でも、兵士が自由に

読めるようにするべきだ

そう、送ったのです。

検閲と本の戦い(第二ラウンド)

エロ描写との戦いは勝利に終わりましたが、新たな戦いが勃発します。

戦争中に選挙が行われるのですが、これをきっかけに野党が噛みつきます。

与党は自分たちに有利になるように本を選ぶのではないか?

理不尽な疑問とは言えないですが、疑うだけでなく投票に関する法律まで

変えようとしたのです。ざっくりというならば、

「選挙に影響する本を兵士に供給してはならない。」

なんなんだこれは!と大問題に発展します。

この話はこの本の第八章に書かれているのですが、その扉には

どの本を陸軍兵士に読ませるか、という判断を陸軍軍務局長に

委ねるくらいなら、ナチスと戦うのを止め、

ナチスの仲間になる方がましである。

とまで言わせるほどです。

最終的に言い出した人が引っ込み、この戦いは終わりました。

終戦

戦争も終わりが近付くと本の内容も変わっていき、実用書が多くなっていきます。

また、戦争中に得た知識を使って仕事や大学などに進みやすくなるような本も

出版されます。

この「終わった後」の事も考えるあたり、アメリカは凄いなあと思いますね。

そして、終戦とともに本の戦いも終わり、この本も「おわり」となります。

 

まとめ

 

まさか第二次世界の戦地に本が送られていたとは思いませんでした。

これがアメリカの強さの一端でもあるんだな、と実感します。

もちろん、検閲だの発禁だのもあるので一枚岩ではない事も書かれていますが、

それでも「自由」に対するこだわりの強さは、さすがの一言です。

そして何より、本の強さを知るには最適な本です。

歴史を扱う本ですが、複雑な用語や言い回しはなく読みやすい本ですので、

表現の自由が議論される時代にあって、おすすめです。 

 

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