ムラージュ、壮絶にして至高の教材であり芸術作品。 石原あえか 大西成明「日本のムラージュ」感想。
石原あえか
大西成明
「日本のムラージュ」
を読んだよ!
まずは上に表示されているこの本の表紙を見てほしい。
一見しただけで、なにやらやばそうな雰囲気を感じると思う。
その感覚は正解だ。
なにしろムラージュは、かつて皮膚科などの領域において用いられた
病気の蝋製標本なのだ。
名古屋大学博物館で初めて実物を見たとき、そこに「患者がいる」とまで感じさせる
圧倒的な存在感、衝撃に驚いた。
病気で鼻の欠けた患者の顔、湿疹で赤くなった肌、発疹による皮膚の隆起…
それは、今、目の前にこの病気の患者がいるといわれても信じたくなるくらいなのだ。
そのインパクトは忘れられないだろう。
製法は「実際の患者に対して石膏を使い型を取り、彩色する」というものであり、
「蝋」という脆い材料のためか、日本にはもう製作できる人間はいない。
この本は、日本におけるムラージュ製作者とその歴史、そしてムラージュの持つ
精巧さや雰囲気を写真で表した本である。
それは読む人間に対して正確に伝わる。同時に、そのグロテスクさ故に
人には薦めにくい。
一方で「人間の腕でここまで表現できる」ということを示す最高峰でもあると
思うので、美術関係の人には一読の価値があると思う。
↓ブログ村参加してます。クリックしてくださるとうれしいです。