takanikoniko’s blog

本とお出かけと時々ドール。

勝者は代償を払ったが、敗者には地獄しかなかった! ロバート・B・ライシュ「勝者の代償」感想。

この記事をシェアする

ロバート・B・ライシュ

「勝者の代償

 

勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来

 

 

を読んだよ!

 

著者であるロバート・B・ライシュさんはアメリカ合衆国クリントン政権下、第32代労働長官を務めた方です。

そんな人が、アメリカの経済の動き、富裕層と貧困層の二極化等について

考察したのがこの本です。

「勝者の代償とかなんやねん…」と思って読み始めましたが、

それについては「一理あるな」となりました。

しかしそれ以上に「敗者には地獄しかねえじゃねえか!」という事で

非常に読むのがつらい本だった…。

まじでどうするんだよ世界!

何が世界を変えたのか

ぶっちゃけて言えばインターネットが悪い。

今使っているこのインターネットが悪い。

インターネットが発達する事で、

いつでも・どこでも・だれとでも良い取引ができるようになった。

それはつまり「気に入らない取引相手はすぐに切れる」ということでもある。

同時に「常に気に入られていなければならない」という事でもある。

故に、「常に新しいサービス、良いサービス」を作り続けなければならない。それも「もっと早く!」である。

それはつまり働き続けなければならないということと同義なのだ。

やってられるか!しかしやらねば死なのだ…。

Googleのオフィスや社員食堂が綺麗なのは策として当然

少し前にGoogleの社員食堂が凄すぎると話題になりましたが

togetter.com

GoogleみたいなIT企業のオフィスや社員食堂がなぜ綺麗なのか。

これも【「気に入らない取引相手はすぐに切れる」ということでもある。

同時に「常に気に入られていなければならない」という事でもある。

故に、「常に新しいサービス、良いサービス」を作り続けなければならない。それも「もっと早く!」である。】

というのと関わりがあると言えるでしょう。

つまり連続して新しいサービス・製品を作り続けるという行為は、

巨大な官僚的組織には向いていない行動であり、

変人と精神分析家からなる小さな企業グループが有利である

(中略)

彼らは仲の良い友人たちと過ごす時間と同じくらい快適であるときに、

最も創造的であり、自発的となる傾向があり

ということなので、速度が重視され常に新しいものを作り続ける事ができるように

あのようなオフィスにしているのでしょう。

「勤続○○年とか無能wwww」で済めばいいが…

昨今、会社は人を減らすためにリストラをするし、若手はすぐに辞めていく…

等と嘆いている人も多かろう。

はっきり言って「お互い様」であり、どちらが悪いと簡単に決められるものではない。

確実なのは「クビにするのもやめるのも日常的な事」になりつつあるという事だ。

それはつまり雇う側にとっても雇われる側にとっても「良い取引」

(=安い人件費と高い給料)を求めての事だから当然と言えるかもしれない。

しかしこうなってくると「勤続○○年」という肩書が危ういものとなる。

それはつまり「ヘッドハンティングされなかった」「向上心の欠如」とみなされかねない。挙句に「何らかの欠陥があるのではないか」とまで言われるだろう…。

なんてこった!

本質的な贅沢?それができなきゃ「気配り」を売れ!

「本質的な贅沢」なんて単語を前にするとすぐに「コレだ!」と返すのは難しい

ように思いますが、筆者はあっさりと

本質的な贅沢とは、自分のために他の人間がその時間を

惜しみなく使ってくれる、ということである

それは同時に、贅沢ができない人間は他人のために時間を使わないと生きていけない

ということでもあります。

これを筆者は

個人的な気配りを売っていくことになる

としています。

これは「AIに仕事が奪われる!」という考え方のさらに先を行くものと言え、

「AIに代替されない仕事」としてあげられる職業の筆頭である介護・福祉などは

まさに「気配り」を売る仕事と言えるでしょう。

ただ同時に、それらは高給な仕事ではありません。なぜなのか。

第一に、比較的生産性の低いサービスである。

どうやったって対象が少ない。

例えば老人ホームなどでは月額15万~20万くらいだ。

kaigo.homes.co.jp

これで何人の従業員を養えるだろうか。

第二に、労働供給が増加している

これは企業が求人を減らしたり、AIなどを使う事で人がいらなくなったり、

共働きなどで常に人が流入しているからだそうだ。

しかし、人口減少などを考えると、日本では少し当てはまりにくいのではないか。

第三に、個人的な気配りをするという仕事は社会的にそれほど高く評価されていない

元々が無報酬であり、してもらって当然だと思われていた仕事が多いので、

評価が高くなりにくいのだそうだ。

結局、勝者は何を代償としているのか?

個人単位で言えば長時間の労働・家族との時間・常に動き続けなければならない…

という程度でしょうけれど、社会全体でみれば「分断された世界」と言えるでしょう。

早い話「世界を食いものにしている」と言えます。

まあ当人たちにとっては「何が悪いwwwwww」とか「やらないとかダサwwww」

とか「身の程しれよwwww」くらい心の底からバカにできるんでしょうけど。

はっきり言って読むのつらいし、いい気分にならないし、お先真っ暗な事しか

書いてないから人に勧められないんですけど、今後の社会を考える上では大切な

本だと思うので、少しずつでも読んでもらえたらいいかなと思います。

 

 

 

勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来

勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来

 

 

 

 ↓ブログ村参加してます。クリックしてくださるとうれしいです。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村

 


本・書籍ランキング